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飛騨の森から - HIDA from the forest –
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Cocochiでは年に数回、飛騨高山へ訪れ、木工職人の方のお話を聞いたり、素材を伐りだしてくる森を見学したりしています。
今回は、その一部を記事にして、つくり手の想い、循環型社会を目指す森で働く方たちの想いを伝えたいと思います。
① 木を伐ることは、良いこと?悪いこと?
木を伐採し、森を伐ることは自然破壊をしているように見え、イメージ的に地球に悪いことをしている。と感じる方は多いかと思います。
でも実は、人の手がちゃんと入り管理されている森はとても気持ちよく、循環型社会を目指す上で大きな役割を果たしてくれることなんです。
森の木を伐る伐採方法に、択伐(たくばつ)と、皆伐(かいばつ)があります。
択伐(たくばつ)とは、その漢字の通り、木を選んで伐採する方法です。
選んで一箇所の木を切るため、手間も費用もかかります。また日本の森は斜面が多く広さもないため、伐った木を森から出してくるのにも労力が必要です。
もう1つの皆伐(かいばつ)とは、一定区間の森の木を全て伐ってしまう伐採方法です。
昔は、効率化とより多くの材料を獲得するために、大規模な範囲で皆伐を実施していました。しかし大規模皆伐をしてしまうとそこにあった森が全て伐られてしまい、もう一度、森として蘇るのにとても長い歳月がかかってしまいます。
現在では、そういった大規模皆伐は自然破壊に繋がるとして、あまり実施されておらず、一定の範囲の森を残しながら伐採をする、小規模皆伐という伐採方法が理想とされています。
こちらが、小規模皆伐の現場です。
小規模皆伐は、樹高のおよそ2倍の広さまでとしており、伐採した部分の植物が万遍なく日光が当たり、若い樹木が育ちやすい環境を考えて伐採しています。
小規模皆伐を定期的に場所を変えながらすることで、安定的に木材が確保でき、また森の循環にも繋がります。
大きく育った古い木を伐り、また何十年にも渡って使用することのできるテーブルに生まれ変わり、古い木を伐った場所には、若い木が芽吹き、元気に育つ若い森が生まれます。
こうした森の循環が何世代にも渡って受け継がれることが、私達が日本の木の家具をオススメしていける理由かと思います。
② 伐った切り株から新しい芽が出る[ 萌芽更新 ]
広葉樹を伐った切り株からは、萌芽更新(ほうがこうしん)といって自然に切り株から芽が出るという自然の力があります。
伐り倒されたばかりの切り株からとてもたくさんの新しい芽が出ます。
そこから出た芽の競争が始まります。日光を求めてそれぞれの枝がすくすくと伸びていきます。
そこから、勝ち残った芽だけが更に大きくなり、若い木として新しい森の一部として生まれ変わっていくのです。
その為、広葉樹の森の小規模皆伐をした箇所には新たに植林などしなくても、元々そこにあった樹木が自然に生まれ変わってくれるのです。
萌芽更新(ほうがこうしん)と言葉でお伝えすると難しく聞こえるかもしれませんが、とても身近なところで、萌芽更新を皆様も見ていらっしゃると思います。
それは、お庭になどでよくある「 株立 」です。
庭木にはよく、単木と株立と2種類の苗木が売られていたりしますが、株立というものが、中央の木を伐りそこから出た芽を上手に育て、萌芽更新(ほうがこうしん)を利用してキレイな株立となっていきます。
雑木の庭が流行っていることもあり、最近はとても良く株立の樹木がお庭に植えられているお宅を見ますが、まさにそれが萌芽更新(ほうがこうしん)になります。
また、この萌芽更新(ほうがこうしん)をさせることには、もう一つのメリットもあります。
若い木は、古い木に比べ、より多くの二酸化炭素を吸収し、多くの酸素を排出してくれます。その為、若い木が多く育つ森を循環させることは、二酸化炭素削減にもつながっていきます。
③ 作り手の想いを伝える。
私達が、飛騨を訪れる理由はいくつかあります。
新商品が発売するにあたり、商品を確認・仕入れするため。
これがもちろん飛騨へ訪れるきっかけではあるのですが、それ以外にもとても重要にしていることは、[作りての想いをしっかり聞くこと。]
飛騨には、木工メーカーが数社あり、また小さい工房もたくさんあります。
それぞれ、木工を生業にするために、様々な思いがあり家具や木製品を作っています。
私達は、なるべくその作り手の方達から、商品が生まれるまでの過程を聞き、お客様へわかりやすく伝えていければと、日頃から思っています。
商品があふれている現代だからこそ、作り手の思いが詰まっているもの、心地よい暮らしに欠かせないものをこれからも伝えていけるよう心がけていきます。
④ 飛騨の森から伝えたいこと
毎年、飛騨を訪れるたびに、豊かな広葉樹の森に心が癒やされます。
その土地々々の環境はあると思いますが、飛騨のように管理された広葉樹の森が、もっと日本全国に広がれば、放置林が減り、豊かで心地よい森が広がると思います。
けして簡単なことではなく、様々な課題はあると思いますが、私達が少しでも国産材の魅力を伝え、循環型社会にしていくことが、これからの日本・世界が、自然と共存して生きていくための手がかりになればと思います。
写真・文/ cocochi
撮影協力/ OAK VILLAGE ・ 木と暮らしの製作所