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「リスと森の贈り物」
小さなリスがつなぐ、森の命の物語。
秋の深まる森の中、小さなリスが忙しそうに走り回っていた。鮮やかなオレンジや赤に染まる木々の下、彼はドングリを集めては、地面のあちこちにせっせと埋めている。冬に備えて食べ物を隠すのだ。リスは森の住人として、毎年この時期になるとこの作業を欠かさない。
ある日、リスは特に大きなドングリを見つけた。それを誇らしげにくわえ、ふかふかの落ち葉の下にそっと埋めた。しかし、森は広く、そしてリスは一匹だ。すべての隠し場所を覚えているわけではない。時間が経つと、そのドングリの存在をすっかり忘れてしまった。
やがて冬が訪れ、森は白銀の世界に包まれた。リスは用意しておいた食料で無事に寒い季節を乗り越えた。
そして春が来た。雪が解け、木々が芽吹く季節になると、リスは森を再び駆け回る。すると、ある場所で見慣れない小さな芽を見つけた。思わず立ち止まり、その芽をじっと見つめる。あの忘れ去られたドングリが、ここで新しい命を宿していたのだ。
時が経ち、その小さな芽は立派な木に成長していく。リスが埋めた木の実は、いつの間にか森を少しずつ豊かにしていた。気づけば、リスの住む森には多種多様な広葉樹が育ち、たくさんの動物たちが集う場所となっていた。
リスはそのことに気づいていないかもしれない。しかし、彼の何気ない日々の行動が、森に新しい命をもたらしていたのだ。リスは無意識のうちに、森を作り上げる「創造者」となっていた。
風がそよぐ森の中で、リスは今日もまたドングリを集めている。どこかに埋めたその実が、再び忘れ去られても、いつかまた新しい木が生まれ、森をさらに豊かにしてくれるだろう。