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広葉樹の森 と 家具
[広葉樹の森]
広葉樹の森には自然に循環をする素晴らしい[しくみ]がある。
それは、人を含めた全ての生き物が恩恵を受けている特別な[しくみ]。
太陽の光と雨があれば、森の木は自然と成長し、高く太く育つ。
葉を落とし、花を咲かせ、実をつける。
そこへたくさんの草花やきのこ、動物や昆虫、微生物が集まってくる。
森ができることで、たくさんの生き物が集まり、いろいろな生き物が集まることで
さらに森が豊かに育つ。
森には人の想像を超えた、大きな自然の[しくみ]があるのだと思います。
昔の人々はその偉大な森からの自然の[しくみ]を壊さないよう上手に森から恵みをもらい人の暮らしを豊かなものにしてきたのだと思います。
[日本の森の歩み]
日本の暮らしは、大正時代までは森と人が共存し合う里山の暮らし方が主流でした。
森から木を調達し、薪を作りながら囲炉裏や暖炉で暖を取り、また木工職人が家具や日用品を作り、良いものを修理しながら永く使うという物の使い方をし、森と人と動物がちょうどいいバランスの暮らし方がありました。
しかし、戦争が昭和初期からはじまり、日本の暮らしは一変。
木材が足りなくなったことで、日本に古くからあった里山や自然の森をたくさん切り開き、そこへ成長が早く、まっすぐ伸びて加工もしやすい針葉樹が国策として人の手によって植えられました。
▼針葉樹(幹がまっすぐ)
針葉樹は、50年ほどで材として使用できますが、広葉樹は80年~100年以上かかります。
また比較的真っ直ぐ伸びる素直な針葉樹とは異なり、広葉樹は枝をたくさん付けたり、曲がったり、形も多種多様です。
▼広葉樹の森
また樹種も針葉樹は多くても10種類ほどですが、広葉樹は100種類以上、人が管理するには断然広葉樹より、針葉樹の方が、楽で手間もかかりません。
そういった理由から針葉樹の主に[スギ]や[ひのき]が植えられました。
しかし、成長が早いと言っても植えてから材として使えるようになるのは、30年~50年かかります。
その頃には、外国から安く安定的に手に入る針葉樹がたくさん入ってくるようになってしまい、日本の森は手付かずのまま、放置林とも呼ばれる森が増えていってしまい現在の日本の森の現状になりました。
[家具に使われている木材の話]
一般的に家具屋さんで販売されている木の家具は、ほとんどが広葉樹です。
針葉樹と広葉樹ですと木の硬さが全く違います。
スギなどの針葉樹でテーブルを作った場合、簡単に傷がついてしまったり、椅子などを作った場合にも耐久性のない物となってしまいます。
その点、スギの3倍ほど硬いオーク材などであれば、テーブルも傷が付きづらく、椅子になった場合も耐久性の高いものになります。
しかしこのオーク材などの広葉樹も産地は日本ではなく外国産の木材が大半を占めています。
理由としては様々ありますが、日本の林業のほとんどが針葉樹を主としているからです。
またアメリカなどの国土の広い国では平らな土地に広葉樹の森を計画的に管理しているため、安定的に家具の材料となる広葉樹が生産できているので、大手の家具メーカーなどはほとんどが外国産の広葉樹を使用しています。
Cocochiでも、もちろん外国産の広葉樹で制作した家具は多数置いてあります。
ただ一部、国産の広葉樹で制作した家具も取り扱っております。
日本の森は、アメリカなどに比べると国土はもちろん狭いですし、平地ではなく山岳地帯がほとんどです。山岳地帯が多いとそこから伐採して持ってくるのに手間がかかり、効率があまりいいとは言えません。
ただ、外国産と日本産の材で違う部分があります。
外国産の材は、運送の関係で丸太のまま運んでくるということはほとんどなく、規格のサイズにカットされ、板幅が細かくなった形で運ばれ、日本でテーブルなどに制作されます。
一方、日本で伐採してきた広葉樹は、森から出すのは少し大変ではあるけれど、丸太のまま手に入ります。その為、板幅を広く個性豊かな材を取ることができます。
無垢材のテーブルを作る際には、接ぎ合わせと言って何枚もの板を合わせてテーブルが作り出されます。
外国産の場合、板幅が決まっているため、大体8枚~12枚ほどの板を合わせて作ることが多いです。
しかし、cocochiがオススメしている国産の場合、板幅が広く取れるため、3枚~5枚ほどの板で合わせて作ることができます。
もちろん一枚の板幅が大きいほど、無垢の質感はダイレクトに伝わりますので、木目や木の質感を存分に楽しむことができます。
[日本の森をより豊かな森に戻すために]
日本の森は、針葉樹の森が増えてしまったとお伝えしましたが、広葉樹の森を取り戻そうという取り組みが、岐阜県飛騨地方で進められています。
それが、[木と暮らしの製作所]というテーブルを主に制作しているcocochiのパートナー工房です。
近隣の森林組合とタッグを組み、様々な森を良くする活動をしています。
木を伐採するにも、伐採方法がいくつかあります。
こちらでは、小規模皆伐という伐採方法を選択し、森の一部を計画的に伐採する方法で、樹高と日の傾きを計算し、伐採後にもまたそこに新たな若い森が生まれるように近隣の木を残した状態で一部を伐るやり方です。
人間の効率だけを考えると、全ての木を伐ってしまった方が楽で効率は良いですが、良い森を未来に残すため、周りの動物達のためにも、正しいやり方だと思います。
また、伐採後のにも次の新しい森が出来るための仕掛けがあります。それは森の本来持っている自然の力を利用した[萌芽更新]というものです。
伐採した切り株をそのまま放置しておくと、切り株の横から萌芽と言って新しい目がすごい勢いで出てきます。これは広葉樹に限って起こる事らしいのですが、根は生きているため、新しい芽が生まれ、またそこから光を奪い合い、競争し、若い樹が育ち、新しい森が生まれます。
この2つの方法を取り入れながら、60年~80年サイクルで日本の広葉樹の森を少しずつ広げる取り組みをしています。
また、80年~100年経った古い木より、10年20年の若木のほうがより二酸化炭素を吸収し酸素を多く排出するそうです。
その為、木は伐らずに放置するよりも、適正量であれば人が適度に管理し、伐採したほうがより豊かな森へと循環していくことになります。
それが、森の[しくみ]を利用しながら私達人間がより良い森を守っていく心得だと思います。
この取り組みが、いつかは日本全国に広がり、日本がより多くの広葉樹の森になることを願っております。
私達が、国産材のテーブルをオススメしている理由です。
[全国から木工家が集まる 家具職人の町 飛騨高山]
Cocochiのパートナー工房[木と暮らしの製作所]は飛騨高山にあります。
飛騨地方の木工の歴史は日本で最古と言われ、古くから豊かな森に囲まれていたことから良質な木材が豊富で樹種も多い森が広がっていました。また元々人と里山が近い暮らしをしていた為、森からの恵みを使いやすい環境にありました。
その様な理由から木工が発祥し、そこに集う職人が全国から集まってきたことにより、技術の向上へと繋がっていきました。
奈良時代には、京都や奈良へ、宮殿や寺院などの建築に多くの飛騨の木工職人が携わり、その技術力の高さから、いつしか[飛騨の匠]として呼ばれるようになりました。
日本に初めて西洋文化が伝わり、椅子を作る際にも、飛騨の匠は真っ先にその技術を得ようと曲げ木と呼ばれる、木を圧縮し曲げる技術を習得しました。
その為、現在でも椅子の産地として有名で、日本の名工と呼ばれる木工家の多くは好んで飛騨地方にいます。
[木と暮らしの製作所]も元々は、個人の木工家として活躍していた数名が集まり現在の形となっています。
少数精鋭の工房だから出来る、国産材を使用した家具を高い技術力で多く生み出しています。
この様な理由から、私達が、国産材・木と暮らしの製作所さんのテーブルをオススメしている理由になります。
写真/文 家具と服と暮らしの店|cocochi 藤江勇仁・市川千紘
撮影協力 木と暮らしの製作所 松原千明
情報協力 飛騨市地域おこし協力隊 広葉樹活用コンシェルジュ 及川幹